私が社会人博士進学を決めるまで

社会人として働きながら博士後期課程に進学することを決めました。昨年夏に院試を何とか突破したところです。入学は2021年4月なので、半年ほどの猶予期間を過ごしています。

受験を決意するまで本当に本当に悩んで、今でも数日ごとに「本当にこの選択正しかったの?」と思い悩んでいます。それでも合格に至ることができたのはそれなりに強い信念があったからで、今後も100000万回は悩むであろう未来の自分が少しでも自信を持てるように、これまで考えたことや今考えていることを残しておこうと思いました。

ブログとして公開することにしたのは、同じように悩んでいる人が何かを感じたりするかもしれないと思ったのと、自分がちゃんと書ききるためです(自分だけが見るメモだとなかなか気力が湧かないから…)。

そんなに書くことあるかなーと思いつつ、いざ自分語りをしてみると筆が進むもので……。

 

自己紹介

まずは私について。

  • 社会人(多分まだ若手と言えるくらい…)
  • 製薬業界・医薬品開発
  • 首都圏の大学で修士を取得
  • 首都圏の大学(修士までと違うところ)に進学予定
  • 専攻:情報学

 

進学を決意するに至るまで

学生時代

当時からD進を考えていたかというと全くそんなことはなく。そもそも研究自体さほど面白いとは思っておらず。研究室の先輩や同期や後輩に遊んでもらいながらふわふわ過ごしていました。それなりに忙しい時期もあったものの大した悩みもなく、研究室生活自体はそれなりに楽しみました。

性格はそこそこ真面目なので、卒論・修論は比較的に力を入れて書きました。当時はウェット実験を行う機会も多く、終電近くまで粘ったりして。見よう見まねでドライ解析も何とかこなしてそれらしい結果が出て。「研究は結構がんばったかな」ってその頃は思っていました。

しかし私の場合、研究テーマは与えられたものでしたし、先輩の先行研究がありました。研究室で経験のない実験・解析も多少はあったものの、実験は専門の方や技術員さんの言うとおりに行い、解析はツールの使い方を最低限調べてとりあえず動いたから満足という状態。手あたり次第何かしらのツールを動かしてみて、出たものをそれらしく解釈するみたいな感じ*1

いつでも次やることは周りの人が教えてくれたので、「この研究を通して何を知りたいか」なんて考えたこともありませんでした。もっと言うと、「研究って結局何をするのか」全くわからないまま卒業しました。運良くあらゆる条件が重なって苦しまずやってこられたに過ぎないのですが、自分の力だと勘違いしていたんですね。

 

就活~入社~社会人になりたての頃

就活で志望したのは医薬品業界です。「修士じゃ医薬品メーカーの研究職は難しい」との噂を耳にして、開発職*2を中心に応募しました。運良く今の勤務先に早い段階で内定をもらい入社を決めました。

入社してから、進学が頭をよぎる最初のきっかけが訪れます。

最初に配属された部署はデータマネジメントでした。仕事内容はよくわからなかったし、興味もさほど持てなかった。まあ組織に所属する以上個人の希望が叶わないことなんかいくらでもあろうし、仕事を覚えれば面白くもなるだろうと思うものの、タイミングが悪かったのか仕事自体がそもそもなかったんです(本当に進行中の臨床試験がなかった)。

先輩や上司ともうまく関係を構築できず、私何がしたかったんだっけとぼんやり席に座る日々を過ごしました。やることもないし。先輩と話すのもなんか怖いしな。別に期待もされていないしな。そう思っているうちにいつしか、朝出社前に身体が動かない・家から出られない、という日が出てきました。前述の通り無駄に真面目な部分があるので、何もしていない状態への漠然とした不安があったのだと思います。これはまずいと。

でも、じゃあ私には何ができる?何がしたい?と改めて考えたとき、何も思いつきませんでした。ここで初めて、「専門性がなければ何もできない」と当たり前のことを思い始めました。

思い返せば、研究で当然のように使っていた手法だってその詳細を聞かれたら答えられなかった。研究の問題点だって指摘されても笑って誤魔化して解決策なんか考えようとも思わなかった。研究室で過ごした3年間、まじで何も考えていなかった。そしてようやく「今までの人生それなりにやってきたつもりだったけど、私には何もない」と実感し始めるのでした。これはちょっと胸にずしっと来ました。

 

社会人2年目くらいから

結局、解析をする部署に異動させてもらいました。「一応情報系の出身だし、そっち寄りの仕事なら少しくらい役に立てるんじゃないかな」と期待を抱きつつ。

実際、臨床開発の仕事は非情報系から入る人が多いので、ほんの少し経験があった私は少し早めに馴染めたかなと思います。面倒見の良い上司に恵まれたことも非常に大きかった。 ちょっと自尊心が回復しました*3

でも「私には何もない」という思いはもう頭から離れません。実際、仕様通りにプログラムを書くとか手順通りに品質管理する等の決められたプロセスはできるけれど、それ以上のことは何も思い浮かばない。今目の前にある仕事の歴史や背景だって気にならない。

人が質問していると「なぜ私は思いつかないのだろう」と思うし、勇気を出して質問すると「なんてくだらない質問だったのだろう」と思う。

みんな優秀なのに、私は、私は、、、、と追い詰められて行きました。

そんな時、少しでもわかることを増やしたくて、統計学を勉強し始めました。

するとどうでしょう。学生時代に受けた授業で全くわからなかったことがわかるようになり、研究手法の背後にあった原理に気づき、視界が開けるようでした。「こんなことも知らずによく研究できていたな???」と首をひねりながらも、ほんの少し自信につながってくるのを感じました。私だって、やればもう少しできるんじゃないか?もしこのままやらない選択をしたら。何もない自分で生き続けることに耐えられるだろうか。

 

受験を決意

もう一度研究をやりたいと、進学を意識し始めました。研究室を調べ、入試説明会に参加し始めます。社内のPh.D.取得者の方々に声をかけて、何人かの方とお話させていただいたりもしました。

進学したい気持ちは強まるものの、そう簡単に決められるものではなく…

「特別頭が良いわけでもない自分が博士号を取れるのか?」

「最低でも3年間、きっと5年近くかかるがやり遂げられるか?」

「やり遂げられるほどの情熱が本当に自分にあるか?」

「子供は産めるのか?(そもそも結婚できるか?)」

迷いに迷いました。そんなにすぐ研究室なんか決められないし。やっぱりやめておこうかな。しかし最終的に、偶然お話させていただいた社内の方に背中を押されて奮い立ちます。勢いで再び研究室見学を申し込みました。幸運なことにその連絡を取った教授が非常に感じの良い方で、やりたい研究分野もマッチしておりました。

それでも迷いました。でも、今受けなかったら一生コンプレックスや後悔とともに生きていくのではないかと怖かった。自分の性格上、もしやらない選択をしたとき「あのときやっていたら自分の人生は違っていたのではないか」といつまでも考え続けてしまうことが目に見えていました。

失敗したら何を失うか考えました。数年単位の時間は確実に失うけれど、学びに費やす時間は無駄ではない。お付き合いしているパートナーに見限られる可能性は怖かったですが、(本当に幸いなことに)後押ししてくれています。少なくはないお金を失うけれど、社会人なら安定した収入があるし……親にも心配されるだろうけど、私の人生だし……と、うじうじと考えた挙句、「いざとなったらやめればいいか!!!」と急に楽観的になり受験を決意するのでした。

自分を突き動かしているのはあまりに強すぎる劣等感なのかもしれないな、という悲しい現実に気付き始めましたが、目をつむりました。

 

受験まで

受験勉強は、当然ながら大変でした。時間があれば、受験までにやったことをテーマに別の記事にまとめたいと思っています。

 

(2021/4/15更新: 書きました)

mritsm.hatenablog.com

 

読んでいただきありがとうございました。

 

 

*1:お察しの通り、一番やっちゃダメな方向にわき目も振らず突き進んでいました

*2:ざっくり言うと、研究職は薬のタネを見つける人たち、開発職は薬のタネを製品にする人たちです

*3:上手くいくとすぐ調子に乗ります